アジサイの観賞




7,ガクのコントラスト

〜絞り〜
   
左から山アジサイの倉木の光、土佐緑風、豊前の紺色、西洋アジサイのダンシングエンジェルのそれぞれの装飾花を拡大した写真である。絞りとはガクに入る筋状の模様である。絞りの色は白色が多いが、上の写真は全て違うパターンのものを並べている。倉木の光は白色の絞り、土佐緑風は緑色の絞り、豊前の紺色は青色の絞り、ダンシングエンジェルは濃いピンク色の絞りである。なお、豊前の紺色は通常は絞りが入らないが、中性の土壌で開花させた場合にのみ見られるものである。絞りの入る品種は山アジサイに多く見られるが、不安定な品種も多く、全ての装飾花にしっかりとした絞りが入る品種は少ない。
(絞りの入る代表品種:伊予絞り、土佐緑風、小町絞り、肥後絞り、井内絣、ダンシングエンジェルなど)


〜覆輪〜
   
左から山アジサイの青覆輪清澄沢、西洋アジサイのマダムバタフライ、フラウマリコ、紫式部のそれぞれの装飾花を拡大した写真である。覆輪とは葉やガクの外縁に入る縁取りのことである。覆輪が入るとコントラストが豊かになり華やかな花になることが多い。特に西洋アジサイに見られる覆輪ははっきりしたものが多く、非常に艶やかになる。西洋アジサイで赤や濃いピンク色の覆輪が入る品種はほとんどが山アジサイの清澄沢の形質由来のものである。
(覆輪の入る代表品種:清澄沢、羽衣の舞、リップル、フラウタイコ、フラウキヌエ、フラウフジヨなど)


〜染み・斑点〜
   
左から山アジサイの下野の夕立、伊予残雪のそれぞれの装飾花を拡大した写真である。下野の黄昏は薄い青色に赤紫色の染みが、伊予の残雪は白色に紫色の斑点が入っている。これらは開花後期に見られる現象で、ガクの老化現象のようなものである。そのため、この染みや斑点がきれいに見える場合もあるが、かえって汚くなてしまう場合もある。
(染み・滲みの入る代表品種:伊予残雪、下野の夕立など)


〜虹色〜
   
左から山アジサイの大虹、紫紅梅、西洋アジサイのロイヒトフォイエルのそれぞれの装飾花を拡大した写真である。アジサイで俗に虹色と言った場合、一般的に言われる赤・橙・黄・緑・青・藍・紫の七色ではなく、ガクが紫色で、底が青色のグラデーションのように色が変化しているものを指す。山アジサイでいくつかの種類が見られるが、西洋アジサイではほとんど見られない。写真のロイヒトフォイエルは土壌によっては完全なピンク色になってしまう。この虹色はアジサイならではのグラデーションで、きれいに発色したものは一級品の美しさを呈する。
(虹色になる代表品種:虹、大虹、姫虹、伊予虹、小田虹、紫紅梅など)


〜一部緑化〜

上の写真は西洋アジサイのグリーンマーブルの装飾花を拡大した写真である。1枚のガクが薄い青色と緑色の半々くらいの割合になっている。この緑はファイトプラズマ菌による葉化病によるものと思われるが、それほど症状が強く出ていないために、もともとの色が混じり二色になっている。緑色一色よりもコントラストがよくなり観賞価値も上がる。
(一部緑化になる代表品種:グリーンマーブルなど)


〜秋色(アンティークカラー)〜
  
左から西洋アジサイのポージィブーケナナ、鹿沼ブルー、貴船の写真である。これらは開花後からある程度時間が経過し、色が変色してきた感じのある雰囲気だが、この状態を秋色アジサイ、またはアンティークアジサイといい、味のある渋い色合いで、通常の艶やかな色合いとはまた違った観賞価値があるとされる。この状態になる条件としてはガクが厚く、花持ちが良いもので、開花後期から秋色になるまで半日陰〜日陰で管理する必要がある。ガクの厚みがあるものは西洋アジサイがほとんどのため、一般的に秋色アジサイというと西洋アジサイを秋色に変化させたものが多い。

上の写真は八重甘茶だが、このように山アジサイでも条件がよければシックな秋色アジサイになる。
(秋色になる代表品種:フェアリーアイ、未来、大空、ホバリアホベラ、マジカルエメラルドなど)