アジサイの基本的なことがわかったところで、今度は実際にアジサイを見た時にそれぞれの個性や違いが見つけられるようここでは花の色や形、花以外の特徴などを取り上げていきます。品種ごとの特徴を知っていると、場合によっては花がなくても品種を特定することができます。それでは下記にアジサイを観賞する際の見所を載せていきますので、これからの観賞に役立ててください。
1,花冠の形
〜ガク咲き〜
左から西洋アジサイのブラオマイゼ、ファーザン、ソフティである。これらはガク咲きと呼ばれるタイプの花をつける。このガク咲きの特徴は、花冠を上から見た時に、中央に両性花のかたまりがあり、それを囲むように装飾花がつくアジサイの最も基本的な花冠の形である。野生種に非常に多く見られ、テマリ咲きはこのガク咲きから変異したものと考えられている。テマリ咲きに比べ派手な品種は少ないが、アジサイらしい素朴さがある。よくこのガク咲きの花をつけるものがガクアジサイだと勘違いされることが多いが、あくまでこれは咲き方の違いを表現する言葉であって、ガク咲きだからガクアジサイだというのは間違いであり、ホンアジサイのようにテマリ咲きのガクアジサイもある。ガク咲きの品種は山アジサイとガクアジサイによく見られる。
〜半テマリ咲き〜
左から山アジサイの鶴富、ガクアジサイの墨田の夢である。半テマリ咲きは装飾花の少ないテマリ咲きといった感じの形で、ガク咲きとテマリ咲きの中間に位置する形である。中途半端な形ではあるが、逆に見ていて面白さを感じさせる花でもある。しかしこの形に咲く品種は非常に少なく、変異の多い山アジサイでも種類は少ない。また半テマリ咲きになる品種のなかでも、栄養状態などが悪いと装飾花の数が増えずガク咲きになってしまうこともある。ガク咲きとテマリ咲きの良いところを両方楽しめるのがこの半テマリ咲きである。
〜テマリ咲き〜
左からガクアジサイの白御殿場、西洋アジサイのホバリアホミーゴ、ポージィブーケメアリーである。装飾花がボール状に密集したこのテマリ咲きは、ガク咲きとは正反対に非常に華やかな雰囲気のある花である。山アジサイでも一部の品種に見られるが、改良種である西洋アジサイに圧倒的に多く見られる形である。しかし、見た目の美しさを得たのと引き替えに、両性花の数が非常に少なくなってしまったため、種子がほとんどできない。両性花はボール状になった花冠の内部にわずかに存在するだけである。
〜ピラミッド咲き〜
左から柏葉アジサイのスノークィーン、アメジスト、ノリウツギのライムライトである。ピラミッド咲きとはその名の通り花冠が円錐状の形になり、登り藤のような花をつける。山アジサイや西洋アジサイなどでは見られず、柏葉アジサイとノリウツギだけに見られる形である。ピラミッド咲きになる品種のなかでも、装飾花の多いものと少ないものとがある。
〜季節変動型〜
上はガクアジサイの隅田の夢で、左から初夏の花、初秋の花、初冬の花の順に並べてある。季節を追うごとに両性花の数が減り、替わりに装飾花の数が増えているのがわかる。夏の頃まではガク咲きだが、秋の頃になると両性花に花弁がつき、装飾花の数が多くなる。晩秋から初冬にかけて咲く終盤の花は両性花がほとんどなくなり装飾花がほとんどになる。初夏から冬まで咲き続ける品種自体ほとんどないので、このようなタイプの品種は希少である。